北海道の医療機関M&Aと事業承継|病院・クリニック・薬局の売却相場と法的手続きの全貌
北海道で医療機関(病院・クリニック・薬局)のM&A・事業承継をご検討中の理事長・院長様へ。本記事では、後継者不足の現状から、医療法人の出資持分評価、個人事業の譲渡スキーム、業態別の売却相場までを専門家が徹底解説します。
目次
北海道における地域医療は今、かつてない転換点に立たされています。札幌圏への人口集中が進む一方で、広大な地方部では急速な過疎化と高齢化が進行し、地域住民の健康を長年支えてきた病院やクリニックが、後継者がいないという理由だけで閉院の危機に瀕しています。
「子供は医師になったが、札幌や東京の病院に勤めていて戻る気がない」 「勤務医に継がせたいが、多額の借入金の個人保証を頼めない」 「薬剤師が採用できず、薬局の運営が立ち行かない」
このような悩みは、個別の医療機関の問題を超え、北海道の社会インフラ維持に関わる深刻な課題です。しかし、廃業という選択をする前に、第三者への承継によって医療の灯火を消さずに済む道があります。実際に、大手医療グループとの提携や、開業意欲のある若手医師へのバトンタッチによって、診療体制が強化された事例は数多く存在します。
本記事では、医療法人の出資持分評価や行政手続きといった専門的な知識から、北海道特有の医師確保の難しさ、業態別の売却相場の考え方まで、医療M&Aの全貌を網羅的に解説します。先生方が築き上げてきた地域医療の拠点を、次世代へ確実に繋ぐための手引きとしてご活用ください。
北海道の医療業界におけるM&Aと事業承継の現状
北海道における医療提供体制は、札幌市を中心とする都市部への極端な集中と、それ以外の広大な地域における深刻な医師不足という二極化の構造にあり、M&Aの動向もこの地域格差を色濃く反映しています。
札幌圏では、人口流入に伴い医療ニーズが依然として高い一方で、クリニックの開業競争が激化しています。そのため、既存の患者基盤を持つクリニックをM&Aで買収し、リスクを抑えて開業したいというニーズが旺盛です。対照的に、地方部においては、公立病院の統廃合や医師派遣の引き上げが進む中、民間の中小病院や診療所が地域医療の最後の砦となっています。
しかし、院長の高齢化が進み、後継者が見つからないために黒字廃業を検討せざるを得ないケースが増加しています。
こうした状況下で、M&Aは単なる経営権の譲渡ではなく、地域医療を崩壊させないための現実的な手段として定着しつつあります。行政や地域医師会も、地域に必要な医療機能を維持するために第三者承継を後押しする姿勢へと転換しており、大手医療法人による広域的なグループ化や、道外からのUターン・Iターン医師の招聘による承継事例が増えています。
北海道の医療M&Aは、まさに地域の存続をかけた再編のフェーズに入っています。
後継者不在と医師不足による閉院リスク
北海道の医療機関において、事業承継を最も困難にしている要因は、構造的な「医師不足」と、それに起因する後継者難です。
かつて一般的であった親子承継は、年々減少の一途をたどっています。経営者の子供が医師であっても、先進医療や研究環境の整った首都圏や札幌市内の病院での勤務を希望し、実家に戻ることを拒むケースが多発しています。親である院長も、人口減少が進む地方での厳しい経営環境を子供に背負わせることをためらい、無理に継がせない傾向が強まっています。
では、親族外の勤務医や第三者に継がせようとしても、大きな壁が立ちはだかります。それは、多額の資金負担と個人保証の問題です。医療法人の出資持分の買い取りや、設備投資にかかる借入金の連帯保証引き継ぎには、数千万円から数億円の資金が必要となります。若手医師にとってこの負担は重すぎることが多く、承継意欲があっても断念せざるを得ないのが実情です。
結果として、資金力のある医療法人グループへのM&Aが、閉院を回避する唯一の選択肢となる事例が増えています。
調剤薬局業界における大手チェーンの買収攻勢
医科・歯科以上にM&Aによる業界再編が激化しているのが、北海道の調剤薬局業界です。道内各地で、地場の調剤薬局が全国チェーンや大手ドラッグストアの傘下に入る動きが加速しています。
その背景にあるのは、度重なる調剤報酬改定による収益性の低下と、北海道特有の深刻な薬剤師偏在問題です。札幌市以外の地域では薬剤師の採用難易度が極めて高く、高額な年収を提示しても応募が来ない状況が続いています。「薬剤師が一人辞めたら、明日から店を開けられない」というギリギリの運営を強いられているオーナーも少なくありません。
そのため、採用力と教育体制を持つ大手企業のグループに入り、薬剤師の派遣や医薬品調達コストの削減といったスケールメリットを享受することで、店舗と雇用を守ろうとするM&Aが多発しています。大手チェーン側も、ドミナント戦略によるシェア拡大や、かかりつけ機能の強化を目指し、地域に根差した優良店舗の買収を積極的に進めています。
業態別に見るM&A動向と売却相場の評価ポイント
医療機関のM&Aといっても、病院、クリニック、薬局では、そのビジネスモデルや法規制が異なるため、買い手が重視する評価ポイントや相場の決まり方も全く異なります。
自院の業態において何が価値となるのかを知ることは、適正な条件での承継を実現し、安易な買い叩きを防ぐための第一歩です。ここでは主要な3つの業態について詳細に解説します。
病院および一般診療所(医科)
有床診療所や病院の場合、病床稼働率や平均在院日数といった経営指標に加え、標榜科目と地域の医療需要の適合性が評価の中心となります。
北海道のように高齢化率が高い地域においては、整形外科、内科、透析、リハビリテーション科などの需要が底堅く、これらの科目を持ち、安定した外来・入院患者数を維持している施設は高く評価されます。一方で、建物や高額医療機器の老朽化が進んでいる場合は注意が必要です。承継直後に建て替えや更新費用が発生すると見込まれる場合、そのコスト分が譲渡価格から差し引かれる可能性があります。
また、過疎地域であっても、そこになければ住民が困るという唯一性がある場合、行政からの補助金や支援体制も含めてプラス評価されることがあります。へき地医療を支える拠点としての公的な価値が、経済的な価値に加味されるケースです。
調剤薬局
調剤薬局の企業価値は、基本的に技術料(処方箋応需枚数 × 単価)に基づく収益力で算出されますが、北海道においては人と関係性が価格を決定づけます。
具体的には、「門前病院との良好な関係が維持されているか」と「管理薬剤師がM&A後も継続して勤務してくれるか」が最重要の評価ポイントです。どれだけ立地が良くても、処方元ドクターとの関係が悪化していたり、管理薬剤師が不在となれば、店舗の存続自体が危ぶまれます。
そのため、譲渡オーナーが薬剤師であり、承継後も一定期間勤務を継続する契約を結ぶ場合や、若手の管理薬剤師が定着している店舗は、相場よりも高いEBITDA倍率で評価される傾向にあります。
歯科クリニック
歯科業界はコンビニより多いと言われるほどの過当競争状態にありますが、北海道の地方部においては事情が異なり、逆に歯科医不足による無歯科医地区の発生が懸念されています。
都市部のM&Aでは、インプラントや矯正などの自費診療比率の高さや、立地の良さが評価の中心となります。一方、北海道の地方部では、地域密着の保険診療基盤に加え、予防歯科への取り組みや、訪問歯科の実績が高く評価されます。また、院長個人のカリスマ性や技術だけに依存しているクリニックは、院長引退後の患者離れが懸念されるため評価が低くなりがちです。
逆に、歯科衛生士が主体となってメンテナンス業務を回している組織体制ができているクリニックは、事業の継続性が高いと判断され、高値での売却が期待できます。
医療法人のM&Aにおける出資持分と法務スキーム
医療法人のM&Aは、株式会社のM&Aとは異なり、出資持分の有無や設立時期によって採用できる法的手続きが異なります。ここを誤ると、承継自体が無効になったり、予期せぬ税務リスクを抱えたりすることになります。
医療法人の類型は大きく分けて持分ありと持分なしの2つであり、まずは自院の定款を確認し、どちらに該当するかを正確に把握する必要があります。
出資持分のある医療法人(経過措置型医療法人)の承継
平成19年3月31日以前に設立された医療法人の多くは、出資持分のある社団医療法人です。このタイプは、出資者が財産権を持っているため、実質的に株式会社の株式譲渡と同様のスキームでM&Aを行うことが可能です。
出資持分を第三者に譲渡することで経営権を移転しますが、問題となるのはその評価額です。長年黒字経営を続けてきた医療法人は、過去の利益が内部留保として積み上がっており、出資持分の時価評価額が数億円に達することが珍しくありません。この場合、買い手にとって資金調達のハードルが高くなりすぎることがあります。
そのため、役員退職金を支給して純資産を引き下げ、持分譲渡価格を調整するといった高度な財務テクニックが必要になるケースが多くあります。
出資持分のない医療法人(基金拠出型)の承継
平成19年4月1日以降に設立された医療法人は、出資持分のない社団医療法人となります。このタイプには持分が存在しないため、持分譲渡という形をとることができません。
この場合、M&Aの手法としては役員の入れ替えを行います。社員総会を開催して現在の社員・理事が退任し、買い手側が指名する新社員・新理事が就任することで経営権を移転します。対価の支払いは、退任する役員に対する退職慰労金の支給という形で行われることが一般的です。
ただし、退職金は功績倍率法などの税務上の適正額の範囲内でなければならないため、金額設定には細心の注意が必要です。過大な退職金は税務署に否認されるリスクがあります。
個人事業のクリニックにおける事業譲渡
法人化していない個人経営のクリニックの場合、M&Aは事業譲渡のスキームで行われます。
土地・建物、医療機器、医薬品在庫、そして営業権といった事業用資産を個別に譲渡します。このスキームで最も注意すべきは、行政手続きです。個人クリニックの場合、開設者が変わる=廃業と新規開設とみなされるため、売り手側が保健所に廃止届を出し、買い手側が開設届を出す必要があります。
この手続きのタイムラグによって、保険診療ができない期間が生じないよう、保健所や厚生局と事前に綿密な調整を行い、同日廃止・同日開設の手続きを確実に進める必要があります。
医療機関の売却価格を左右する独自の査定項目
医療機関の価値算定においては、一般的な財務指標による評価に加え、北海道という地域性や医療機関特有のリスク要因が加味されます。
これらはデューデリジェンスにおいて重点的にチェックされる項目であり、プラス査定にもマイナス査定にもなり得ます。
管理医師および医療スタッフの継続勤務
医療法上、診療所や病院には必ず管理医師を置かなければなりません。M&Aが成立しても、管理医師が辞めてしまえば、その瞬間から休診せざるを得なくなります。
北海道の地方部では、新しい医師を招聘することは極めて困難です。そのため、現在の院長がM&A後も数年間は残ってくれるか、あるいは看護師やコメディカルスタッフの離職リスクが低いかが、資産価値以上に重要視されます。
特に、積雪の多い地域や交通の便が悪い立地においては、スタッフの送迎体制があるか、駐車場が確保されているか、院内保育所があるかといった福利厚生面が整っているかどうかが、人材確保の観点からプラス査定の要因となります。
診療圏調査と将来の患者数推移
現在の患者数だけでなく、その地域の未来がどうなるかも評価に影響します。
北海道は人口減少が著しいですが、エリアによっては高齢者人口が増加し続け、医療需要が高まる地域もあります。買い手は詳細な診療圏調査を行い、将来にわたって安定した外来数・入院数が見込めるかを精査します。
また、近隣に競合となるクリニックが開業する計画がないか、あるいは地域の基幹病院との連携状況などもチェックされます。独自性の高い専門外来を持っている場合や、訪問診療によって診療圏を広げている場合は、商圏縮小の影響を受けにくい強固な経営体質として高く評価されます。
行政監査とレセプト請求の適正性
医療経営の根幹であるレセプト請求が適正に行われているかは、最大のリスクチェック項目です。
過去に北海道厚生局の個別指導や監査を受け、返還請求を求められた履歴がないか、あるいは現在進行形で不適切な請求を行っていないかが厳しく調査されます。もし不正が発覚すれば、保険医療機関の指定取り消しという最悪の事態になりかねず、M&Aは即座に破談となります。
また、施設基準を満たしていないにもかかわらず加算を算定している場合も、将来的な返還リスクとして評価額から減額されます。クリーンな運営を行っていることが、高値売却の前提条件です。
北海道の地域医療を守るためのM&Aパートナー選定
医療機関のM&Aは、一般企業のM&A以上に専門性が求められます。医療法、医師法、薬機法、健康保険法といった多岐にわたる法規制をクリアしなければならないからです。
相談先を選ぶ際には、以下の視点を持ってパートナーを見極めることが、失敗しないための防衛策となります。
医療業界に特化した専門知識の必要性
M&A仲介会社であればどこでも良いわけではありません。医療業界に特化した専門チームや、医療M&Aの経験豊富なアドバイザーが在籍しているかを確認してください。
例えば、前述した個人クリニックの承継における廃止・開設の同時申請や、医療法人の役員変更届、麻薬施用者免許の書き換えなど、医療機関特有の行政手続きは非常に煩雑で、スケジュール管理が命です。
これらをスムーズにハンドリングできるノウハウがないと、数週間の診療停止期間が生じたり、患者様に迷惑をかけたりする事態になりかねません。また、出資持分の評価や税務処理についても、一般企業とは異なる高度な知識が必要です。実績のある専門家を選ぶことが必須です。
医師会や地域連携への配慮
地域医療は、自院だけで完結するものではありません。近隣の病院との病診連携や、地域医師会との関係性の中で成り立っています。
M&Aによって経営者が変わる際、地元の医師会に対して事前に仁義を通しておかなければ、その後の運営に支障をきたす場合があります。
そのため、アドバイザーには、単なる契約実務だけでなく、地域内での摩擦を生まないような調整能力や、行政・医師会との折衝における立ち回りへの配慮が求められます。北海道の地域社会特有の空気感を理解しているパートナーであることが望ましいでしょう。
M&A総合研究所が医療機関の承継に強い理由
M&A総合研究所は、医療・介護分野に特化した専門部署を擁し、北海道エリアにおける成約実績を積み重ねています。地域医療の存続という使命感を持ち、先生方をサポートする当社の強みをご紹介します。
医療・介護業界専任のアドバイザー体制
当社には、医療経営士の資格を持つ者や、元製薬会社・医療機器メーカー出身者など、医療業界の内部事情に精通したアドバイザーが多数在籍しています。
診療報酬の仕組みや、医療法人の特殊な会計基準、理事長特有の悩みなどを深く理解しているため、専門用語でのスムーズな意思疎通が可能です。単なるビジネスライクな売買ではなく、「地域の患者様を守るにはどうすべきか」「職員の雇用をどう維持するか」という医療人の視点に立った提案を行います。
(URL: https://masouken.com/ )
全国ネットワークを活用した医師・買い手候補の探索
「地元の知り合いには相談しにくい」「道内では後継者が見つからなかった」というケースでも、諦める必要はありません。
M&A総合研究所は、独自のAIマッチングシステムと全国規模のネットワークを活用し、北海道エリア内だけでなく、全国から最適な候補者を探し出します。例えば、北海道進出を狙う首都圏の大手医療法人グループや、「故郷の北海道に戻って開業したい」と考えているUターン・Iターン希望の勤務医など、地域の情報網だけでは出会えない相手とのマッチングを実現します。
完全成功報酬制によるリスクのない支援
医療法人の出資持分評価や、最適な承継スキームの検討には専門的な知識が必要ですが、当社では相談料・着手金・中間金は一切いただきません。
M&Aが成約して初めて手数料が発生する完全成功報酬制を採用しています。「まずは自分の病院の価値を知りたい」「どのような選択肢があるか聞いてみたい」という段階から、金銭的なリスクを負うことなく、安心して専門家のアドバイスを受けることが可能です。
(URL: https://hokkaido-ma.com/ )
承継後のトラブルを防ぐための事前準備
契約書にハンコを押して終わりではありません。M&Aの本当の成功は、経営権が移転した後、地域医療が滞りなく継続され、発展していくことにあります。これを実現するための統合プロセスについて、売り手側が準備すべきことを解説します。
患者様への周知と引き継ぎ計画
経営母体や院長が変わることに対して、最も不安を感じるのは患者様です。「診療方針が変わるのではないか」「あそこの病院は潰れたのか」といった誤解や風評被害を防ぐため、計画的な情報発信が必要です。
具体的には、承継の数ヶ月前から院内掲示やホームページで告知を行い、かかりつけの患者様には診察時に直接説明を行います。また、電子カルテや紙カルテの引き継ぎも重要です。過去の治療歴や投薬情報が確実に新しい医師に共有される体制を整えることで、患者様は安心して通院を継続することができます。
職員の処遇とモチベーション管理
「M&Aをしたら職員が全員辞めてしまった」という事態は絶対に避けなければなりません。職員の雇用契約の承継や、給与・勤務条件の変更については、細心の注意を払って説明を行う必要があります。
基本的には、M&A直後は急激な条件変更を行わず、当面の間は従来の条件を維持することが望ましいです。その上で、新しい経営陣が個人面談を行い、法人のビジョンや職員への期待を直接伝えることで信頼関係を構築します。「経営が安定して、安心して働けるようになる」というメリットを伝え、モチベーションを維持することが、医療の質を落とさないための鍵となります。
まとめ
北海道の医療機関M&Aは、医師不足や人口減少という厳しい現実に対する、有効かつ希望ある解決策です。病院、クリニック、薬局、それぞれの業態や法人の形態に合わせた適切なスキームを選び、経験豊富な専門家と二人三脚で進めることで、地域医療の灯火を次世代へ確実に引き継ぐことができます。
廃業という決断を下す前に、まずは自院の持つ価値や、承継の可能性について確認することから始めてみてください。先生方の長年の尽力が詰まった医療機関を必要としている後継者は、必ず存在します。適切なマッチングと準備が、地域住民と職員、そして先生ご自身の安心につながることをお約束します。
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